報告 ·日本語 ·未確認

09 日露間の言語研究・教育環境に関する差異について

修嘉 阿出川 Nobuyoshi Adegawa

刊行年
2014-12-31
出版
Kanagawa University
言語
日本語
openalex
W2616200551
mag
2616200551
URL
http://hdl.handle.net/10487/13183

要旨

先に筆者が研修のために滞在したモスクワにおいて,高い外国語運用能力を持つロシア人や,質の高い教科書,あるいは文法研究の成果物としての理論文法書などの様々な成果に触れるにつけ,日本でのそれとの間にある,俄には埋めがたいほどの差異は,一体どのような要因によって生じているのかについて考えを向けざるを得なかった. 本報告では,ロシアの教育・研究機関において,このような外国語学習の高い成果や,あるいはそれを支える言語研究の進展を可能にしているのはどのような要因なのか,またそれを踏まえた上で,将来的にロシアと日本の状況を比較・検討していく事項をまとめるため,言語研究の応用的側面と,基礎研究の側面に大きく分類した上で,日露双方の置かれている状況の差異について考察した. まず,言語研究の応用的側面に関する差異としては,①授業のあり方に関する比較(本文2.2.),②教科書に関する比較(本文2.3.),③辞書に関する比較(本文2.4.)をそれぞれ試みた.①に関して言えば,ア)学習時間数の多寡と,イ)クラスの人数の多寡に関する差異が大きく影響している可能性がある.ロシアでの教育機関では,学習時間が日本よりも多く,また一クラスあたりの構成人数も少なくなっており,外国語の学習効率を高めることが念頭に置かれ,そうした環境が実現できている.②の教科書に関する比較に関しては,ア)教科書類の出版数の多寡,イ)教科書が対象としているレベル,ウ)内容面,教科書で取り上げられている項目の多寡といった差異について考察した.ロシアで出版されている教科書は,レベルが多岐に渡っており,また扱われている内容も幅が広いのに対して,日本の教科書は初級者向けのものが圧倒的に多く,また内容面でも,よく用いられる表現が扱われていないなどの偏りが感じられる.また,③の辞書に関する比較については,学習者が電子辞書を用いる昨今では,電子化されている露和辞典,和露辞典が限られていることから,双方とも理想からは遠い状況にあると言えるため,大きな違いは無いだろう. 次に,こうした応用的側面を下支えしている,言語の基礎的研究の進展をめぐる差異については,1)基礎研究としての言語研究を行う環境面についての比較(本文3.1.)と,2)言語研究の成果についての比較(本文3.2.)を試みた.まず,1)については,①研究に従事できる機関,②研究者に確保されている時間,③教科書などの教材作成が正当に評価される土壌があるか否かといった点について検討した.研究機関に関してはロシアの方が数としては多く,また研究活動に充てられる時間も多いように思われる. 2)の言語研究の成果として,ロシアでは大部な日本語文法理論の研究所が出されているが,日本でそれに匹敵するようなロシア語の研究書は未だ出されていないことから, 大きく水をあけられていると言わざるを得ない. 総じて,双方の置かれている環境とも一長一短と言えるのかもしれないが,しかしながら,それでもなお,言語研究の成果である文法研究や,あるいは教科書の出版といった成果物,また外国語教育の成果である学習者の外国語運用能力の高さなどにおける大きな差異は厳然と存在していることを認めざるを得ない.今後も,こうした諸要因について注目しつつ,両者の差異についての情報収集を積み重ね,調査を行うための準備を進めていきたいと考えている.

主題

この書誌の出所

  • openalex— W2616200551(2026-08-13取得)

引用キー: 修嘉201409日露間の言語研究

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