論文 ·日本語 ·未確認

上代日本語の「客」とアイヌ語の借用形 : marapitəとmarattoの歴史について

Izumi OCHIAI

刊行年
2025-03-20
出版
National Institute of Informatics
言語
英語
openalex
W7144141413
doi
10.14943/112978
URL
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/repo/huscap/all/94622/11_Ochiai.pdf

要旨

上代日本語に客を意味する「まらひ甲と乙」という語がある。奈良時代以前はハ行がパ行に遡り、乙類のoは[ə]に遡るので祖形は*marapitəになり、mara「稀」とpitə「神、人」から成る複合語である。上記のmaraはmareと範列関係にありそれぞれ被覆形、露出形と呼ばれる。前者は後続する要素がある場合(例えば複合語前部要素)に現れる形式である。その後、ə がoに合流しmarapitoになりさらに、中古日本語ではpがwに変わり直後のiも脱落してmarawto (marauto)が生じ、tが有声音化しmaraudoも生じた。さらに母音連続auがoo ([ɔ:] > [o:])に変化したmarooto、maroodoも生じた。これらの形式ではpitoがuto/udoに変わった。同時期にはmareudoという形式も記録されているが、これは本来複合語前部要素として使われない露出形のmareが使われている。これは被覆形・露出形の機能的区別が失われたことを示す。14世紀にはmarebitoという改新形も現れる。これは複合語前部要素としては新しい形式のmareを使い、さらにuto/udoをbito(pitoのpを語中において有声音化)に復活させた形式である。この形式の出現には、語源のpitoから大きく変形してしまったuto/udoが意味と形式の関連において不透明であるという背景が考えられる。一方、アイヌ語の辞典ではmarattoが「まらひと」の借用形とされるが、maraptoという形式も記録されており、借用当初は*marapitoという形式であったことが推察される。日本古典文学における年代から推定して、この形式が借用された年代は9世紀を下らないだろう。

主題

この書誌の出所

  • openalex— W7144141413(2026-08-12取得)

引用キー: OCHIAI2025

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